薬と心の病

【自己治癒力】

もう10年程前になるでしょうか。夜中テレビを見ていたら、歌舞伎役者の故中村勘三郎さん(当時はまだ勘九郎さんだったかな?)が、親しい友人をゲストに招いてのトーク番組が放送されていました。

その時のゲストが女優の大竹しのぶさんと渡辺えりさんで、若い頃から仲が良かったそうです。

 

3人での昔話などをしていた時に勘三郎さんが、ある番組のリポートで大竹しのぶさんがギリシャに訪れた際の話を聞きたい、と言ったんです。

勘三郎さんは一度聞いてたみたいなんですが、とても良い話なのでもう一度、という事で。

 

大竹しのぶさんがギリシャに行って、現地のコーディネーターに劇場の遺跡に連れて行ってもらったときに「その当時この劇場の1階は何だったか分かるかい?」みたいな質問をされたそうです。

 

大竹しのぶさんは分からなかったので、答えを聞いてみると「病院だったのさ」との事。

(今から思えば多分そこはアスフレピオス神殿だったと思われます)

その当時の病院は怪我や骨折などの外科的なものは別にして、長引きそうな内臓疾患や特に精神疾患に対しては、ドクターが診察をした後この患者さんには癒しが必要と思ったら音楽を聴かせたり、思考力が鈍っていると判断したら哲学の芝居を、泣く事が必要と判断したら悲劇を、笑いが必要と判断したら喜劇を見せたそうです。

時には何らかの競技を見せて気分を高揚させることもあったみたいですね。

そして芝居や競技を見せても、その患者さんの精神状態に変化が起こらなかった時、要は治りそうにない、と判断したら初めて薬を処方したそうです。


大竹しのぶさんはこの話を聞いて「女優(役者)にも人を治せる力、人の役に立てる力があるんだ」と感銘を受けたと話していました。


もう2000年以上も前の時代の話ですから、当然西洋薬などない時代ですし、薬として使える生薬やハーブなども、そんなに多くの種類が見つかっていなかったでしょうから、演劇や音楽が重要な役割を担い、人々の生活にも密接な関わりがあったんですね。


ただ私はこの話を聞いた時には、特に心の病=精神疾患に対しては『薬ありきではない』という事を再認識しました。

第1回目のブログのタイトルの「健体康心」にも書きましたが、いくら体が健やかでも心が康らかじゃないと健康な状態ではありません。

そして心を康らげるものは薬ではないし、薬では康らげることはできないんですよね


先ず“心の凝り”をほぐして『自己治癒力』を上げられる状態にしないと薬の100%の効果は望めません。

精神疾患の原因となった事を除去する事は無理なので、1日の過ごし方や物事の考え方・捉え方を変えていただかないと前には進んでいかないんですよ。

その為のアドバイスが必要になりますし、薬を飲むにしても、なるべく体への影響や負担の少ない生薬やサプリメント等をうちはオススメしています。

もちろん「笑う」「泣く」「感動する」ことなどの重要性もお話ししますよ。


お客様から「どこの病院がいいの?」と聞かれる事があります。

これは病院に限らず薬局に関しても、例え周りが「あそこはヤブ医者だ」とか「あそこの薬は効かない」などの悪い評判を言ってたとしても、そこのドクターや薬剤師さんと会ってみて、納得して話を聞ける話をしやすい顔を見るだけで、声を聞くだけで安心できる、といった印象であれば、そこが一番のオススメです、と答えます。

どんな名医でも相性が合わなければ、逆にストレスも溜まり心を閉ざしていってしまうので、自己治癒力も上がりません。


病気を治すには薬との相性も大切ですが、先ずは人との相性が重要です。

「このお医者さんなら任せられそうだわ!」とか「この人が勧めるお薬なら、きっと効くに違いない!」と思えた段階で、すでに自己治癒力は上がり始めているんですから。