食と漢方

【漢方薬の豆知識】

最近では病院からも漢方薬が処方される事が多くなりました。

一般的なお薬の服用方法の大半が「食後30分以内に服用」となっているのに対して、漢方薬の場合そのほとんどが「食前、または空腹時に服用」となっていますよね。

 

お客様の中には「漢方薬はキツイ薬じゃないので、胃を荒らす心配がないから食前やお腹の空いた時に飲むんでしょ?」と思われている方が結構いらっしゃいます。

まぁあながち間違い、ではないんですが・・・

 

漢方薬は、植物や動物の部位を使った生薬を何種類か組み合わせたお薬で(中には便秘薬の成分で有名なセンナのように、単独でもお薬として出ているものもありますが)その植物や動物の中には

現在でも皆さんがよく口にされているものがあるんです。

写真の左からニンニク・山芋・生姜ですが、ニンニクダイサン(またはオオビル)と呼ばれていて、効能は発汗・疲労回復・冷え症改善など、山芋サンヤクと呼ばれていて、効能は滋養強壮・止寫・健胃など、生姜ショウキョウと呼ばれていて、効能は食欲不振・発汗・健胃・鎮咳などです。

この辺は一般的に食事でもよく使われる代表的なものですが、ほかにもたくさん生薬として存在するものもあります。


ですからもしも漢方薬を食後に服用したら、食事で摂ったニンニクや山芋などの作用が重複して働き効果が強く出すぎて“薬が効き過ぎる”可能性もありますし、逆に漢方薬の効能を弱めてしまい“薬が効かない”可能性もあるんです。

中には漢方薬に食べ物の効能が加わる事で、全く違う漢方薬に“変身”してしまうことも。

このような理由から漢方薬は食前、または空腹時の服用、になるんですね。

 

またこの写真の生薬は桂皮(ケイヒ)といって、ニッキとかシナモンと呼ばれています。

京都の有名なお菓子の八ッ橋ではニッキとして使われ、シナモンとしてはケーキなどの香料の役割で使われたりハーブティーとしても有名ですよね。


この桂皮の効能は発汗・鎮痛解熱・鎮静作用などがあり結構幅広く漢方薬の成分の一つとして使われています。

その桂皮が含まれる代表的なお薬に葛根湯(かっこんとう)という薬があって、その葛根湯に含まれる7種類の生薬がこの写真の生薬です。

先ほどお話したショウキョウも入っていて、どのメーカーが葛根湯を作ったとしても、葛根湯という名前なら必ずこの7種類の生薬がそれぞれ決められた分量が入っていて、1種類でも少なかったり、逆に多かったり分量がバラバラだったら、葛根湯という名前では出せません。つまり極端な話、生姜をたくさん食べたあとに葛根湯を飲んでもショキョウが“多すぎる”ので、それは葛根湯と呼べない薬になってしまうんです。

また葛根湯はケイヒやショウキョウの効能にあるように発汗作用がありますので、体を温めて治す薬です。

ですから、せっかく葛根湯を服用して寒気を取ったり熱を下げたいと思っていても、体を冷やすような食べ物飲み物を摂ったら効果も半減してしまいます。

また葛根湯以外でも、薬の名前の最後に「湯」という文字が入っていれば、基本的に体を温める作用のあるお薬ですので、冷たいお水ではなくぬるま湯での服用が望ましいのです。

中には液体タイプの葛根湯を、一般的な疲労回復系のドリンク剤のように冷蔵庫で冷やして飲む、という方がいらっしゃいますが、これも温めて治すという観点からもNGですよね。


このように漢方薬と食べ物は密接な関係があり、時には食べ物によってお薬の効果を増減させる時もあるので、服用方法は守って下さいね。